夏の初め、
父さんは ぼくをキャンプにさそった。
いつもは たくさんのキャンプどうぐをつんでいくのに、
今回は…
はりがねと にづくりシート2まい。
はんごう2つに ナタとナイフ。
ヤスと つりざお。
そして米とミソと塩。
トラックの荷台には カヌー。
…それだけ。
「 ほんとうのキャンプだ。テントはいらない。」
父さんは ひたすら車を走らせ、
山おくの、ふつうの人は入れないようなところへ・・・
文を書いた松居さんは、
家族で北海道に移住し、
アイヌの古老から 文化を学び、山で泊まる方法などを教えてもらい、
友人達と カヌー、山岳スキー、登山、釣り…などをしているそう。
本の中で お父さんが ぼくに教えたことは、
松居さんが アイヌの古老から教えてもらったことなのだろう。
お父さんとぼくが 満天の星空を眺めていたとき、
・・・広い広い宇宙の中で、そして遥か昔から続く大きな時間の流れの中で、
自分は ほんの小さな命なのだ・・・
ということを思ったぼくは、突然こわくなる。
…お父さんは こわくない?…
…なぜ、森にくるの?…
お父さんは答える。
…自分だってこわい。
それでも森にくるのは、
きっと、たった今おまえが感じているそのこわさを、
いつもわすれずに生きていたいからだな…
・・・私にとっての大切な本が、また増えた。・・・