Sさんの足跡は、スノーシューになっている。
Sさんが歩いた早朝は、
もっと気温が低くてサラサラ・フワフワな雪だったんだろうな。
まだ私はツボ足で歩いている。
振り返った景色、
歩き始めた頃は青空が少し見えていたけど、いつの間にか曇り空。
向こう側の斜面の様子が、
歩き始めの頃とは 明らかに違うものになった。
!!!
!
向こうに見える景色にドキドキ。
ガスで上の方は見えないけれど・・・
こんな景色を眺めることができているだけでも感動だぁ~。
初めて歩く道で不安もあるけれど
それ以上にワクワクが大きい。
うわ・・・。
もう少し行ってみよう。
登って・・・
下って・・・
うわ・・・。
もう少し行ってみよう。
少し下って・・・
少し登って行くと・・・
下の方から水音が聞こえてくる場所に。
うわ・・・。
ズーム。
もう少し行ってみよう。
おお・・・。
あれ? 足跡が左の方へ?
うわ! Sさん、ここを下って行ったのか?!
う~ん・・・
行ってみたい気持ちもあるけど・・・パス!(;^ω^)
この辺りで さすがにツボ足ではキツくなってきたので、
景色を眺めながら ワカンを装着。
もう少し行ってみよう。
下って・・・登って・・・
振り返って見る。
歩き始めてしばらくは すぐそばにあった沢が、
この辺りでは ずいぶん下に見えるようになっている。
そして・・・
沢の向こう側の斜面の木々は 白く美しく見えている。
もう少し行ってみよう。
何だか・・・
別の世界に来たような・・・
そんな感覚になったりする。
そんな感覚になると 不安になるけど
もう少し行ってみよう。
うわ・・・私、今どこにいるんだろう?
なんて思ってしまうような景色。
もう少し行ってみよう。
・・・と、ここで、
「強風とガスで、姥ヶ岳手前で引き返してきた」
というSさんが下ってきた。
Sさんが下ってきたなら ここで私も折り返そうと思ったのだけど、
「せっかく ここまで来たのだから、装束場の方へ向かってみたら?」
とSさんは言った。
「ここから装束場までは そんなに時間はかかりませんよ。
ちょっとトン・トン・・・と渡る所はあるけど、大丈夫でしょう」
そ・・・そうですか? (;^ω^)
「じゃ、時間や状況を見て、行けるところまで行って折り返してきます」
と 答えた。
不安な気持ちでSさんの後ろ姿を見送り・・・
「ホントに私、行くのかな・・・」
なんて自分で思いつつ・・・
行けるところまで 行くよ~!
できるなら、
せっかくだから装束場まで行けるといいなぁ・・・。
・・・と思っていたのだけど、
霧氷のついた木々に見入って 眺めたりして・・・
明らかにペースダウン。
わ、渡る所に来た?(;^ω^)
Sさんは「トン・トン・・・」なんて軽い感じで言ってたけど、
私の場合は「恐る恐る・・・よっこらしょ!」だったよ~。(;^ω^)
さっきより気温が低くなってきた。
「ホントに もう少し行くの?」
と もう一人の自分が訊くたびに
「うん。もう少し行けるところまで」
と答える。
今度は 向こう側へ渡るみたいだぞ。
う~ん・・・
どこに足を置こうか・・・
ビクビクしつつ 何とか渡った。
姥ヶ岳の方から ゴーゴーという風の音が聞こえてくる。
暴風という感じなんだろうな。
さっきまでは静かだったけれど・・・
進むにつれ、冷たい風が前方から吹いてくるようになった。
空は灰色。少しガスが下りてきている。
さて、どこまで行けるだろうか・・・。
うわ・・・何だか氷の国みたいになってきた。
横を見ると、こんなだよ。(;^ω^)
次第に前方から吹雪が吹き付けてくるようになった。
少し前に歩いたはずのSさんのトレースが だいぶ消えている。
そろそろ厳しくなってきたぞ。
あの曲がり角まで行って、どうするか決めよう。
・・・④へ続く・・・