佐藤要さんの『鳥海山を登る』の写真を眺めていて
強い憧れを持った景色の一つに『岩氷のある景色』がある。
雪と風が作り出した岩氷は、
写真の中から飛び出して すごい迫力で私の方に迫ってくるように感じられるのだった。
佐藤さんにメールで感想を送らせていただいたところ、
岩氷の写真を何枚か送って下さった!ので、
佐藤さんの了解を得て ブログにアップさせていただくことにした。
( 文章は『鳥海山を登る』より引用)
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鳥海山の大きな魅力に、
厳冬期の山頂付近に現れる岩氷がある。科学的には、
過冷却水滴が凍り付いたエビノシッポの集合体で、
八甲田や蔵王の樹氷と違いはない。
蔵王の樹氷を『モンスター』と呼ぶのなら、
鳥海山の岩氷は『異星人』と言いたい。
冬の日本海から吹き付ける湿った季節風の傑作だ。
風雪に明け暮れる日々、
ブナ林に張ったテントを少しずつ前進させて森林限界を抜け出すチャンスを待つ。
巡ってきた晴天の日、
波打つ風紋の雪原を越えて氷化した雪の急斜面を登り、
岩氷が蠢くような頂稜に立つ。そんな山行がいつも心の中にあった。
伏拝岳から先に進む時は、
入ってはならない所に踏み入るような決意を必要とした。
行者岳の先の急斜面を越えると風景が一変して
岩氷に覆われた異世界が始まる。
新山や七高山、外輪山のすべての突起に形成された岩氷群が、
今にも動き始めるような怖さを覚えた。
新山と対峙する七高山は迫力に満ちている。
ゴジラの背のようなスカイライン、
岩氷が覆う火口壁、
シュカブラが波打つスノーブリッジ。
雪を伴う季節風が、新山に遮られて北と南から回り込み、
火口壁に激突して形成された雪の吹き溜まりが
スノーブリッジだ。
火口壁の岩氷が、
スノーブリッジを境に 北側で北に向き、南側で南に向く。
岩氷が季節風の吹く方向を示すことに感動した。
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いつか私も、自分の目で こんな岩氷を観てみたいなぁ・・・。